コロナの中で働く若者の葛藤

●新型コロナウィルスが再び蔓延を始めているが、単に数字が増えているというだけでなく、本当に身近に迫ってきているなと感じている。というのも私の子供は塾の先生をしているが、その塾の生徒が通う小学校で一年生の児童が新型コロナに感染したのだ。そして学校は消毒のため休校となっている。

 

●塾としても、同じ小学校に通う児童には自宅待機をお願いしたそうだ。ただ私の住む大阪では、コロナがある程度流行しても学校を閉鎖しないと知事が明言している。学校は消毒をして児童の様子を見つつ再開される方針であり、そうなると塾としてもそれらの児童を受け入れざるを得なくなってくる。

 

●感染者は重症化しにくい若い人に多いし、医療態勢も逼迫していないので4月とは状況が異なるとして、国や地方自治体は具体的な対策を打ち出していないように思う。確かに私の子供はまだ若いし、かかっても重症化するリスクが低いことは確かだ。むしろほとんど無症状で過ごす可能性の方が高い。

 

●そして学校が通常通り開かれている中では、例えかなり感染者が増えてリスクが高くなったとしても、塾としても通常通りの授業を続けざるを得ない。また経営的に見ても、リスクを恐れて閉鎖することは考えられない。こうして働く人は、仕事をいつもの通り続けることを要請される。

 

●しかしその働く若者には大切で守りたいと心から願う家族や知人・友人がいる。そしてその中には祖父母などの高齢な人、基礎疾患を持つ人もいるのだ。自分が知らないうちに感染し、無症状のまま例えば家庭に持ち帰り、祖父母を感染させ、重症化させてしまう可能性があるのだ。

 

●もし私が自分の子供だったら、こんな風に感じるに違いない。確かに生活するためのお金を稼ぐ仕事は大事だし、特に今の雇用環境で仕事があるのはありがたいと思う。また子ども達を教えることにも意味を感じる。しかしもし自分が大切な人々に感染させてしまったらどうしよう。それは嫌だ、と。

 

●私は今いくつかのことを感じている。まず親の立場から私はこうした葛藤に置かれている子供には「真に自分を大切にする」という観点から選び、行動して欲しいと思う。どの選択にもリスクはあるが、こうして選んだのであれば、それが生み出す結果は、私としても恐れず受け止めたい。

 

●そしてこうした葛藤は、私の子供一人のことではないだろうと思う。多くの若者に共通した葛藤のはずだ。しかし生活に余裕がない場合、つまり自分の収入で家族を養い、また生活に困窮しているケースでは仕事を辞める選択肢は取りにくいのではないだろうか。葛藤の中で働くしか仕方がないのだ。

 

●だから災厄が起きた時、放っておくと最も被害を受けるのは弱い人(この場合は生活に余裕がない人)なのだと感じる。統計的に見ればリスクの中で仕事を続けた人の何%かは感染し、身近な高齢者などにうつしてしまうからだ。もしそれで愛する人が死んでしまったら、この若者には傷が残るかもしれない。

 

●今考えてみると、4月〜5月の緊急事態宣言は個々人の心の中の葛藤を国が引き受けてくれた側面があるように感じている。しかしそれも限界なのだろう。この葛藤が個人に投げ返された今、弱い立場の人だけにリスクを押し付けずに、私たちはどのようにそれに対処することができるのだろうか。

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