新型コロナウィルスと私〜コロナという禍が生み出す良いもの

●新型コロナウィルスの蔓延のせいで、生活が一変して半年が経とうとしているが、このコロナウィルスは私にも多くの悪影響を与えている。高リスクの高齢家族と同居しているため、20代の息子も含め感染リスクを最低限にする生活をしなければならなかった。

 

●だから楽しみである外食や旅行も控えたし、電車に乗るのもやめている。仕事面でも体験学習の研修などはほとんど中止となった。結果として収入も減少している。「今ここ」を生きるために欠かせないラボラトリーも開催できなくなり、友人や仲間と顔を合わせるのも少なくなっている。

 

●しかしこうした禍をもたらす一方、新型コロナウィルスは私にとって良いものも生み出している。まず何より出張や移動が大幅に減り、体への負担が軽くなった。ここ数年、年間数十日も宿泊を伴う研修やラボラトリーをしていたが、今は家でゆっくりと過ごすことができ、高血圧の症状もかなり改善されている。

 

●また新たな生活や仕事のやり方を見いだすことができた。例えば大阪市内の移動はこれまで地下鉄に頼ってきたが、最近はほぼ自転車で移動している。確かに雨の人は大変だが、早いし景色が見ることができるなど快適な部分もある。今までなぜこうした通勤手段を思いつかなかったのだろうと思うほどだ。

 

●仕事でも新たな発見があった。私はアドバイザーの立場で会議に出ているが、今はオンラインが多い。もちろん対面でしかできないこともあるが、オンラインでいいこともある。通勤がないので時間が節約できるし、私がそこにいないことで現場の人がより能動的に動いてくれることも起きている。

 

●あと今まで全く見過ごしてきた身近な自然に目が向くようになった。公園にある樹木や小さな花、夕暮れに浮かぶ彩雲、ビルの合間に浮かぶ三日月。これまで自然はどこかに遊びに行って見るものだったが、移動ができない今の私には、ふと目の前にある小さな自然が豊かなものに感じられている。

 

●さらに家族で過ごす時間が増えた。まず私たち同居家族4人でゲームをしたり散歩したりしている。夕食もほとんど一緒に食べている。こうしたことはこれまで旅行に行った時にはあったが、こんなに日常的に行えるのはほとんどなかった。気詰まりな面もあるが、こうした時間を豊かに持てるのはありがたい。

 

●また別居している兄の家族とオンラインを通じてやり取りすることも増えた。「集まれ動物の森」のソフトを私以外の一族全てが持っていて、アメリカにいる姪とも時間を合わせ、一緒にゲームを楽しんでいる。同様に遠くの友人とオンラインで楽しむ時間も増えたが、これもコロナの影響なしには考えられない。

 

●あと私が本当によかったと思うのは、これまで取り組めなかった本のまとめと考察に取り組む時間が与えられたことである。特にキルケゴールの「哲学的断片の結びとしての非学問的あとがき」という本には、私にとって大切なことが書かれていると思っていたが、忙しさの中でずっと後回しになっていた。

 

●ところがコロナの影響で宿泊研修がなくなったので、その時間を使って本を抜き書きし、それを読み直しつつ、私にとってどういう意味があるかを考察していった。それは今の私の実存のありようを意識化することを促し、これからの生き方に影響を与えてくれる本当に貴重な体験だった。

 

●このように新型コロナウィルスは私にとって悪影響を与えているだけでなく、様々な良いものも生み出している。まだしばらくこのコロナを意識した生活は続くと思うが、悪いところばかりを見るのでなく、いいところに目を向け、それらがより良い生成を生み出すように生活していきたいと感じている。

 

 

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