ここでは、リフレクション(体験と学び)に関する考えや理論をご紹介しています。

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リフレクション(体験と学び)の基礎知識

<体験学習のサイクル〜EIAHE'(イアハ)モデル>

 私たちが体験からいかに学ぶかを説明するためのモデルとして、右図がよくつかわれます。

 

体験(Experience)をふりかえり、その体験で何が起こっていたのかを指摘(Identify)します。そしてなぜそうなったのかを分析(Analize)し、次の機会があったらどうするかを仮説化(Hypothesize)し、そして新しい場面で試行(E’)してみます。

 

体験から学ぶステップはこのような循環過程なのです。このサイクルのステップの英語の頭文字をとってEIAHE’(イアハ)のサイクルと呼ばれることもあります。

 

<「プロセス」に着目することで生まれる体験からの学び>

そして体験からの学びでは「コンテント(内容、議題など)」と「プロセス(人と人とのかかわりから生まれる過程)」という考え方が重要となります。具体的に見ていきましょう。


「Aさんが進行役になって、ある課題(例えば苦情への対応)について話し合いました。Bさんが途中で解決策を提案しましたが、誰も反応せずBさんも黙ってしまいました。時間が押し迫る中、Aさんが自分で解決策を発案し、皆が発言しない中、その方法で決まりました。」こうした会議においてもコンテントの流れに対応し、一人ひとりの中にさまざまなプロセスが生じています。


普段私たちはこのプロセスにはあまり目を向けません。ちょっと違和感を覚えてもそのまま気づかず流してしまったり、はっきり気づいていても隠して言わないことが多くあります。しかしそれでは学びにはつながりません。

 

表1 グループの中でコンテントの流れに対応して生じるプロセス

コンテント

プロセス

Bさんの解決策についての発言

Aは自分の考えと違ったので、余計なことを言うなあと思った。

 

雰囲気が堅くCは自分の経験が浅いこともあって緊張して発言したいができない

Aさんが1人で提案し決定に至る発言

CAさんが焦っているように感じ、大丈夫かなと感じている

 

E,Fは自分の意見があったのに言えなかったと残念に思うと共に、Aさんの進め方に疑問を感じている

 

Bは自分の提案が議論されず、Aの案に決まったので納得がいかない気持ちで黙っている。

 

このプロセスがグループの中でわかちあわれると、図のようにEIAHE’のサイクルが回り体験からの学びが生じてきます。

 

例えばまず表1におけるプロセスが進行役Aさんに伝えられることで、Aさんは自分の進行役という体験において何が起こったかに気づくことができます。

 

つまり「自分が焦ってしまっていたこと」、「進め方や決め方に満足していないメンバーがいたこと」、「発言したい人がいたこと」などです。 

 

そしてこうしたことが「なぜ起こったのか」を考える中で、「自分が時間に気を取られすぎる傾向があり、焦る要因になっていること」、「進行の中で黙っている人に発言を求めていないこと」、「他の人の発言に応答していないこと」がその原因とわかってきます。

 

ここから進行役Aさんは、他の人の発言をまず聴く、焦らずメンバーの動きを見るなどの次の機会に向けての学びを得ることができます。

 

このようにEIAHE’モデルは、自分の気づきや学び(特に行動のレベルにおいて)がどのように生じるかを理解する上で有効なモデルと言えるでしょう。

 

リフレクション(体験と学び)についてより深く知りたい方へ

<リフレクション(体験と学び)に関する知識や理論、研究、ワーキングペーパーなど>

体験と学びに関しては数多くの文献がありますが、より深く知りたい方のために、いくつかをご紹介しましょう。

 

1、コルブの体験学習(経験学習)の理論

 

 まずコルブは体験学習に理論的ベースを与えてくれている、体験と学びの第一人者です。(コルブの経験学習の理論の概要はこちらから)彼の『Experiential Learning』(『経験学習』)は有名ですが訳本がありません。ここではコルブの『経験学習第2章』のまとめをつけておきます。

 

2、デューイの経験と教育の考え方

 

 コルブの理論のベースの1つになっているのが、アメリカの哲学者デューイの考え方です。ここではまずデューイ『経験と教育』のまとめをつけておきます。

 

 また体験と学びを理解するには、デューイの「衝動」概念の理解が重要です。ここではデューイをはじめとするプラグマティストの研究者である齋藤直子さんの『内なる光と教育』の助けを借りて、デューイの「衝動」概念についてまとめています。


3、レヴィンの考え方

 

 同様にコルブの理論のベースになっている、ラボラトリーを創始したクルト・レヴィンの生涯を弟子のマローがまとめています。ここでは彼の『クルトレヴィンの生涯と業績』のまとめをつけておきます。

 

4、リフレクション(内省)研究

 

 昔から師匠の一人だった山口真人さんと、イアハのサイクルは行動レベルでの学びの説明はできるが、自分や他者、グループなどをどう捉えるかや「あり方」のレベルの気づきを説明することが難しいね、とよく話していました。最近この辺りの説明ができるものとしてリフレクションの研究が進んでいます。ここではリフレクション研究の流れの簡単なまとめをしています。

 

5、ロジャースのパーソナリティの変容モデルの考え方

 

 リフレクションによる「深い学びの次元」が起きた結果、私たちはどのように成長していくのでしょうか。それを教えてくれるのがパーソンセンタードアプローチの創始者、ロジャースのパーソナリティの変容モデルです。ここでは体験からの学びとロジャースのパーソナリティの変容モデルのかかわりについてまとめています。

 

6、ジェンドリンの体験過程の理論

 

 フォーカシングを創始したジェンドリンの考え方は、体験と学びのサイクルの中の「指摘(Look)」の部分に大きな示唆を与えてくれます。ここでは体験からの学びとジェンドリンの体験過程の理論のかかわりについてまとめています。

 

7、体験からの学びの支援

 

 体験からの学びの支援については、ラボラトリートレーニングにおける学習支援者であるトレーナー論として論じられてきています。ここではこれまでのラボラトリートレーニングにおけるトレーナー論のまとめをしています。

 

 また私も看護系の雑誌にいくつかの体験からの学びの支援についての論文を載せています。抜き刷りがありますので、興味のある方はご連絡下さい。連絡先はこちら hirono@maholo-ba.jp


・『師長・主任業務実践』(2012年3月号)「看護師に対する内省支援の必要性と方法」

・『ナースマネージャー』(2012年6月号)「カンファレンスを活用してリフレクションを促進しよう」




<ラボラトリートレーニングの生成と発展>

体験からの学びについての代表的な学び場であるラボラトリートレーニングは1940年代終わりにアメリカで生まれました。その生成と発展の歴史を知りたい方はここを見てください。